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「では、これより二階堂ミドリ様の葬儀をとり行います」
住職が重々しく一礼した。おれも慌てて頭を下げる。
こうして、二人だけの葬儀が始まった。
住職がお経を唱えだす。
おれも二十数年の人生の中で、人が死んでいくのを見てきた。親父、おふくろ、同級生、近所のおじさん、おばさん。そして、うちのばあさんやミドリさんも。そしてその度に葬式に出てきた。人が死ぬということを初めて知った子どものころは、訳も分からずただそのことが悲しくて、実感もあまりわかないまま、涙と鼻水を流して泣いていた。親父やおふくろが死んだとき、悔しくてやりきれなくて、泣いた。ただ、それから後の葬式に、人の死というものにおれは真剣に向き合っていなかったように思う。どうせ人は死ぬんだという諦め、そして慣れ。それが、おれの人の死に対する態度を変えた。せんの、うちのばあさんの葬式でさえ、「仕方がない。人間はいつか死ぬんだから」とどこか他人事のように思っていた。それをおれは大人になったのだと信じこんでいた。今思えば恥ずかしい。一人前の人間になったと思いこむことで、おれは人の死から逃げていただけだったんだ
。
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