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「廃材で作ってもらったけん、ちょっと格好が悪いけど、どうか? これでおまえのおばあさんのいとこも浮かばれるやろう」
「ありがとう。まさか住職がここまでしてくれるとは思わなかった。ていうか、信じてくれるかどうかも心配してたのに」
「正直、おれはまだ信じれんけどね」
「え?」
「だって、猿の死骸を見せられて、これがおまえのおばあさんのいとこだって言われても、そう簡単に信じれるわけないやろ」
「じゃあ、何で……」
「それでおまえの気が済むなら、事実だろうがそうじゃなかろうがおれは別にかまわんよ」住職はミドリさんの墓の前で手を合わせながら言った。「こうやって手合わせて、死んだ人間のことを想って、それで少しでもその人が救われるのなら、おれはそれでいい」
住職は目を閉じたまま黙ってしまった。おれもその横で目を閉じながら手を合わせる。風が吹いた。おれたちの周りの雑草が一斉に音を立てた。
家に帰りつくと、すぐに百合香さんへ手紙を書いた。ミドリさんの葬式を行ったこと、ミドリさんの墓地ができたこと、その二つの報告の手紙だ。一週間くらい経ったが、まだ連絡は来ていない。
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