猿の葬儀

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 それから、おれは朝早く、仕事に行く前に墓地へお参りにいく習慣がついた。親父とおふくろとばあさんの墓。そして、そこから少し離れたところにあるミドリさんの墓。墓石に水をかけ、きちんと拭き、きれいにしてやって、花まで活けてやっている。  これで、おれの話も終わりだ。  そうだ。忘れていた。おれにはあと一つ、いつも気をつけていることがある。それはミドリさんの墓に花を活けたり、何か物を供えるとき、少しスペースを空けておくことだ。なんでかって? ミドリさんの墓へお参りする人が来たら困るじゃないか。おれよりもミドリさんの墓に参るのにふさわしい人が。おれはいつまでもその人が訪れるのを待っている。
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