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おれはミドリさんと百合香さんにお茶とお茶菓子を出すことにした。ばあさんが最高のお茶っ葉と呼んでいた一級品のお茶と、とっておきのバウムクーヘンを出した。おれが自分へのごほうびに買ってきてた、季節限定の、イチゴが入ってるとっておきのやつだ。心して食うがいい。
おれがお茶とバウムクーヘンを持ってくると、
「ああ、おいしい」
ミドリさんが満足そうな声を出した。
「ほんとに。おいしい。バウムクーヘンもお茶も」
百合香さんが笑った。それを見ておれもうれしくなった。
「いやあ、お茶なんてめったにいれないから、そういっていただけるとうれしいです。そうか、おいしかったですか。それはよかった」
「さてと」
猿が腰をあげた。
「お帰りですか?まだ早いでしょう。もうちょっとゆっくりなさってください」
「ありがとうございます。でも行かなくてはならないところがあるので…。本当はもうちょっとお話をしていたいのですが、今回は失礼します。ご両親にもよろしくお伝えください」
おれは苦笑した。
「それではまたの機会に。ただ、親父もおふくろもとっくの昔に死んでしまったんですよ。ぼくが、まだ小学生三年の生意気なガキだったころに。だから、仏壇の前でよく言っておきますね」
「そうだったんですか……」
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