物思いにふける

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 空から水が断続的に降ってくるなんておかしい。  俺はずっとずーっと思っていた。みんなそれが当たり前だと思っているようだけど、俺はいつまでたっても違和感が拭えない。  仕組みは知っている。水の循環が間違っているとも思わない。  でもやっぱり変だ。俺はこの仕組みを聞いて、まるで出来の良いファンタジー小説の魔法の設定を語られているように感じた。  ファンタジー小説、あるいはSFも含めても良いかもしれないけども、こういったものには一つ以上の嘘がある。魔法なんてあるわけがないし異世界も存在しない。作家ごときの考えた理論で現代文明を超えた技術など生まれるはずもなく、つまりそれらはまるまる嘘であり、どれだけの名作だろうと現実から少しでも乖離したならばそれは嘘で作られた物語なのだ。まさに幻想だ。  ……これを聞いてどう思ったろうか。少なくとも俺はこう思う――だからどうした。それはそういうもので、その上で楽しんでいるんじゃないか。なんて無粋な考えだ、と。  だが、雨とはもしかするとそれと同じものではないか。この世界において、そういうものだから、で済ますべき嘘の一つなのではないか。逆説的に、嘘が混じった世界観とはファンタジーなのだから、今この場所は幻想なのではないか?
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