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中学の友達と高校でもまた対戦できるようにがんばろうねって言われたけど、私、部活の中の下手組だったしな。
「はあ。なんでないんだ」
まったく人のいない購買が目について中に入る。
「いらっしゃい。新入生ね」
購買のおばさんがニコニコして菓子パンを並べている。
「こんにちは。どう、何の部活にするか決めた?」
奥のおばさんがカウンターから身を乗り出す。
「本当は文芸部に入ろうと思ってたんですけど、なんか廃部になっちゃったみたいで」
肩を落としてため息交じりに答えると、意外な答えが返ってきた。
「え? 文芸部なら今もあると思うけど。ねえ」
「うん、さっきも文芸部の二年生、ここに来たわよ」
「ど、どこですか!」
今度は私がすごい勢いで身を乗り出す。
「今日は図書室で活動してるって言ってたわよ。でもぜんぜん新入生が来てくれなくて、みんな漫画研究部に流れちゃうって愚痴こぼしてたわ」
「あ、いってらっしゃい」
おばさんたちの声を背中で受けながら、私は駆け出していた。階段でつまづきそうになりながら、パンフレットを見る。
「図書室、図書室……あった。中央棟四階」
人があふれんばかりにいる階段をひたすら突き進む。何回か人にぶつかった気もするけど、そんなの無視!
階段を上りきって、教室二・五個分くらいの図書室のドアを勢いよく開けて乗り込む。自分でも驚くくらいすごい音が出て、図書室にいた人たちが飛び上がった。
みんな、肩で息をしている私を目を丸くして見つめている。
その中の一人がばっとはじかれたように私の目の前に来た。
「きみ、もしかして、文芸部に?」
三年生の緑の上履きをはいている男の人に目をきらきらさせて問いかけられる。
はやる気持ちを抑えて聞き返す。
「ここ、文芸部ですか?」
「そう、ここは文芸部!」
「やあっっった~! 入部します!」
思わず胸の前でガッツポーズをして、勢いそのままに入部宣言。
さっきの男の人に今度は声を震わせてたずねられる。
「し、質問なんだけど、きみは文系?」
「は? あ、いや、ぶ、文系です」
一瞬素で聞き返してしまったのをあわてて取り繕う。
先輩はそんなことを気にもせずに、伸び上がるようにジャンプした。
「ぃいよっしゃああああああ!!」
耳をふさぎたくなるほどの大声を出して、腕を振り回すように喜ぶ先輩。
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