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ぶうん.....ぶん.....
...ぶっ
蚊が、鼻の上をかすって僕のくちびるに静止する。
そのこそばゆさに、思わず目を覚ます。
さっきまでいた心地よい世界から、
体の神経がまるごと引き剥がされた気分だ、、、
静かな、静かな夜の出来事。
じっと、蚊を見つめる。
どうやら、敵は譲る気がないらしい。
「.....」
僕はそれを舌に慎重に、慎重にはりつけて、それから、舐めるようにそっとすくいとった。
ゆっくり、ゆっくり咀嚼する。羽根が、パリパリといていて海老の尻尾が薄くなった感じだ。
脚が歯に挟まって、心地わるい。
味は、苦かった。
たぶん、誰のかもわからない血が僕に染み込んでいると思う、、。
自分から飲み込んでおいてなんだが、
ただただ気分が悪かった。吐きそうだった。
独特の、形容しがたい緊張感が、張り詰めていた。
不快感と同じくらい、興奮した。
他人と自分が、違うという特別感に浸った。
それが僕の快感に直結する。
時刻はもう深夜と早朝とも言いがたくて、眠気も一周まわって、頭が冴えていた。
窓に取り付けられたカーテンの隙間を通して、
街灯が、僕の部屋を青白くしている。
もし誰かがそばにいたら、僕のことを、不気味な目で、蔑みの目で、見てくれるだろうね。
でも、意味無いよ。
だって、どんなに人と違ったことをしても、
君は、君だけはもう、見てくれはしないんだから。
そんな、現実が、重い。僕には重すぎた。
なんだろう。虚無感なんだろうか。
心の中にある言葉を表すのは、難しいよ。
感情を表す言葉は沢山ある、
それを、いくつもいくつも積み重ねて、人は、誰かに感情を伝えようとする。
でも、そんなこと不可能だ。
それは、言葉は感情を伝える手段でしかないから。
感情は、言葉で出来ていないから。
でも、これは僕の素直な願望だ。
僕はもう一度、時名 しずく に会いたい。
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