特徴的

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特徴的

なんといえばいいのだろう。僕はものすごい衝動に駆られている。 あの人はずれている。それに関して間違いはないと思う。 白衣を着た人なら学校にいるだろう。あるいは病院かもしれない。TPOというものは大切だと改めて感じる。 ここはあくまで、電車の中だ。 薄汚れた車内は白衣を汚していく。座席に座らず、立っているから、尚更、目立って見える。見方によっては悪目立ちだろう。 残念ながら、同じ車両に乗っているのは、その人と僕しかいない。とてつもなく、その状況は空気を悪くした。いや、空気が悪いと感じるのは僕だけかもしれない。 だって、その人は、ただ普通に、外の写真を撮っていたからだった。そこから見えるのはコンクリートの闇だったからだ。 やっぱり、この人は何かがずれている。 こういう状況の時、どうするべきなのか、分からない。 「あ、ヒビだ」 彼は一言、呟いた。 一度、見たものは、忘れられないのだけれど、二度見たものは、どこが特徴的なのかがはっきりと分かってくるもので、この時もそうであったという事ができる。 例えば、浴衣を着た客である。紺の生地に、縦に白いラインが入ってるオシャレ
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