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ぽきり、とシャーペンの芯が音を立てて折れた。
「図星かな」
「違う、シャー芯の寿命よ。女の子の力にも耐えられないなんて、きっと末期だったに違いないわ」
シャーペンの後端をカチカチと押したら、残りの芯がぽとりと日誌の上に落ちた。筆箱をあさっていると、目の前にすっと芯が差し出された。なにかの罠だろうか。わたしは少しの間、彼のきれいな指に挟まれた芯を、じっと見つめた。おそるおそる手を伸ばし、そのままなにごともなく受け取る。
「……ありがとう」
「ずいぶん警戒されているみたいだね」
「人の心を読めるなんて突然言い出す人に、警戒心を抱かないほうがおかしいと思うけど」
吉沢くんは楽しそうに声を上げて笑った。
あ、えくぼ。
わたしは睨むふりをしながら、彼の姿を視界に収めた。長いまつげに、二重のまぶた、すっと通った鼻筋。中性的な顔立ちは、いつ見てもきれいだと思った。
「僕の顔になにかついている?」
吉沢くんの声がして、わたしは我に返った。つい見惚れてしまっていたらしい。顔が熱くなり、思わずうつむいた。
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