3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ」と彼が言う。「渡邉さん、僕にずっと言いたくて言えなかったことがあるでしょ?」
「え」と間抜けな声がもれた。「なんのこと」とすっとぼける。
「ないの?」
「ないわよ」
「そっか。それは残念だな。けっこう期待していたのに」
傍から見れば、いまのわたしはひどく挙動不審な女に映るだろう。
期待? え、どういうこと?
吉沢くんの真意が読めずに、思考がぐるぐると迷走する。
ばれている? それとも鎌をかけているだけ?
もしわたしの気持ちに気づいているのなら、いまが打ち明けるチャンスかもしれない。
吉沢くんを見れば、嗜虐心を隠し切れていない。にこにこと笑う彼が、ひどく恨みがましい。
わたしはぎゅっと目を瞑り、覚悟を決める。
最初のコメントを投稿しよう!