想いは隠せない

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「ねえ」と彼が言う。「渡邉さん、僕にずっと言いたくて言えなかったことがあるでしょ?」 「え」と間抜けな声がもれた。「なんのこと」とすっとぼける。 「ないの?」 「ないわよ」 「そっか。それは残念だな。けっこう期待していたのに」  傍から見れば、いまのわたしはひどく挙動不審な女に映るだろう。  期待? え、どういうこと?  吉沢くんの真意が読めずに、思考がぐるぐると迷走する。  ばれている? それとも鎌をかけているだけ?  もしわたしの気持ちに気づいているのなら、いまが打ち明けるチャンスかもしれない。  吉沢くんを見れば、嗜虐心を隠し切れていない。にこにこと笑う彼が、ひどく恨みがましい。  わたしはぎゅっと目を瞑り、覚悟を決める。
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