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「好きです」
彼の澄んだ瞳に見つけられ、気がついたら、わたしは告白をしていた。顔が熱くなるのを感じながら、返事を身構えて待っていたが、吉沢くんはなかなか口を開こうとしなかった。
「あ、あの」としびれを切らす。
「ごめん、僕の一挙一動に翻弄されている姿がかわいくて、つい」
吉沢くんの言葉に、「へ、変態」と思わず返してしまう。彼はくすくす笑うと、「嫌いになった?」
窓から風が吹き込み、彼の艶のある黒髪がさらさらと揺れる。
「なれるわけないじゃん……」
声をしぼり出す。わたしは恥ずかしさのあまり、ただ縮こまることしかできなかった。
吉沢くんの気配が近づく。
「渡邉さん、顔を上げて」
優しい彼の声色に誘われ、わたしは言われるがままになる。彼の視線とわたしの視線が絡み合う。
五感のすべてが、吉沢くんに吸い寄せられる。まるで世界に二人だけしかいないような錯覚をおぼえた。
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