わたしは彼を好きじゃない

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わたしは彼を好きじゃない

 犬飼が、女子に告白されたらしい。  わたしはその噂を、昼休みに友人のハルカから聞いた。 「とりあえず、返事は保留にしたみたいだけど」とハルカ。 「物好きな子もいるもんだねえ」  生意気そうなあいつの顔を思い浮かべていたら、ハルカが首を傾げた。 「いいの? ひなた、彼のこと好きだったんじゃないの?」 「まさか。何度も言ってるでしょ。あんなやつ、タイプじゃないって」  ちくりと胸が痛んだことには気づかないふりをし、わたしはできる限り強がってみせた。友人は納得していないようだったが、ふーん、と疑わしげな視線を送ってきただけで、それ以上の追及をしてこなかった。  あいつが告白されようと、わたしには関係のない話だ。
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