わたしは彼を好きじゃない

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「いいの? このまま泣き寝入りをして」  放課後、ハルカが昼休みと同じことを口にした。 「素直になりなよ。好きなんでしょ、犬飼くんのことが」  否定しようとしたけど、今度はうまく言葉が出てこなかった。口を開きかけ、そのままなにも言えず、しょんぼりとうなだれる。 「だったら、気持ちを伝えないと」 「だけど、御手洗さんから告白されてるし……」 「そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ。いまを逃したら、もう一生、チャンスがないかもしれないんだよ」 「ハルカ……」  力強い瞳が、わたしを見つめていた。友人の優しさに、勇気がわいてくる。 「ありがとう」  わたしは教室を飛び出した。がんばれー、とハルカの応援する声が、背中に届く。  階段を駆け下り、グラウンドを目指して走る。  あいつはこの時間、部活だろう。  サッカー部員である犬飼の姿を探すと、ちょうど休憩中なのか、水飲み場にいるのが見えた。よし、と気合を込め、歩みを進める。
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