わたしは彼を好きじゃない

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「犬飼!」  あいつはびっくりしたようにこちらを振り返った。 「ひなた……どうしてここに」 「わたし、犬飼のことが好き」  躊躇ったら、きっと不安に押しつぶされる。だから、勢いに任せて、わたしは告白した。ずっと言えなかった気持ちを、口にする。  犬飼はしばらくの間、アホみたいにぽかんと呆けていた。ややあって、「ひなたにそう言ってもらえて、すごくうれしいよ」彼は、はにかんだ。 「そ、それじゃあ、わたしは、も、もう行くから」  走り出そうとするわたしを、待って、と犬飼の必死な声が止める。 「まだ、俺の返事が言えてない」 「返事って、だって、あんたには御手洗さんが」 「ふたりには、協力してもらったんだ」  彼はばつの悪そうな顔をした。 「協力?」わたしは犬飼と向き合った。
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