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「さて問題です。今日は何の日でしょう。」
隣で活子が子供たちに問題を出している。
「はい!えっとね、ドラえもんのたんじょうび!」
「ブブー」
「えー、だってきょうの7じからたんじょうびしゅぺさるやるんだよ。」
「それもそうだけど今日の夜ご飯には関係ありませーん」
「はい!萌木保育園のしょーりつきねんび!」
「おーすごいね、創立記念日なんて知ってるんだ。」
「うん、あのね、しゅじゅきせんせいががおしえてくれたの。きょうはしょーりちゅきねんびだよって。」
「へえーすごいね。でも残念!違いまーす」
「じゃあなあに?なあに?」
「正解は……ダカダカダカダカダカダカシャーーーーン。大人になるまで教えませーん。」
「おとなになるまでおしえましぇーんの日?」
「ちがうちがう。二人が大人になるまで内緒ってこと。」
「なんでないちょなの?」「やあだ、しりたあい!」
騒ぎたてる二人の子供を活子は悪戯っぽい目で見る。
2018年9月3日。それは静雄と活子の結婚記念日だった。
よく喋りよく食べよく動いた二人の子供は家に着くなりばたんと倒れ、死んだように眠った。
「いやぁそれにしてもよく喋るね、あの子たちは。」
「ほんと、私まで疲れちゃった。今日は早く寝ようかな。」
「活子に似たな。」
「うん、しーちゃんなんてすぐぬかされちゃうんじゃないの。あの子たちのコミュ力に。」
「そうかもな。」
正直、コミュ力とかどもりなどと言われると心が痛む。だが、活子にそんなことを言っても無意味だということも十分わかっていた。
「ああ、そうだ、ちょっと待ってて。」
そう言って静雄は部屋に戻り、会社帰りに買った花束を手に持った。
「はい、結婚記念日祝い。」
「おおー、ありがとう。あ、かわいい。ピンクのバラだ。」
活子はバラを鼻に近づけた。
「ああ、いい匂い。じゃあ、台所に飾っておくね。」
そう言って、活子は台所へ駆けて行った。
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