純情少年の夢 ~愛を込めた相合い傘~ 

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 藍田ミツユ。14歳。彼の夢は、『女の子と相合い傘をする』ことだ。  雨の日に傘を忘れた女子を自分の傘に入れ、一緒に下校する。そんなドラマのワンシーンのようなシチュエーションに憧れを抱いていた。  そもそもの動機は至極単純。女の子と親しくなりたい。ただそれだけだった。  普段異性と話さないミツユにとって、仲良くなるには何かきっかけが欲しかった。席が隣同士になったり、一緒に日直になったりと、女子に接近する機会はあるものの、その程度では何も起こらない。女子と親しくなるには、もっとドラマチックで、ロマンチックな出会いが必要だと考えた。  そこで注目したのが相合い傘だった。偶然を装いさりげなく優しさをアピールでき、二人っきりの空間を共有することによりそのまま恋愛に発展する可能性も十分ありうる。面と向かっていきなり告白するより勝算が高いと踏んだのだ。  しかしいつ何時、そのシチュエーションに遭遇できるか分からない。天気予報の予想を覆す突然の雨。そうそう何度も起こり得ることではない。あったとしても、迎えが来たり置き傘をしている場合もある。  それでもミツユは一縷(いちる)の望みに賭けた。天気予報を見ないで登校しちゃう、うっかり屋さんな女子がいることに期待した。
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