廃墟へ

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この話は、ある方から聞いた一部本当にあった話に色々と脚色を加えさせて頂いております。 私の母は所謂見える人だった。 「あー、今日はあの道は止めた方がいい、遠回りして来なさい。」とか「今絶対後ろ振り向いたら駄目よ。」とか、曖昧で特に恐い思いをしたわけではない私は正直あまり信じていなかった。 高校卒業後、大学は家からだと三時間かかる、だから学校の近くで独り暮らしがしたい、そう理由をつけて私は家を出た。 家が嫌だとかではないけど、少々干渉されるのを鬱陶しく思い始めていた頃だったから、丁度良い機会だと思った。 最初の半年はバタバタで、大学とバイト先の往復だけでグッタリ。遊ぶ余裕なんてなかったが、二年めになると余裕も出来て毎日楽しかったし、意外と一人でもやっていけるなんて、甘く考えていた。 そんな中、暑さが厳しくなりだした頃にバイト先の友達から、近くにある心霊スポットとして有名な廃墟に行ってみないかと誘いを受け、面白そうだからとついていく事にした。 近いと言っても、車で行けばの話で、友達の彼氏が連れて行ってくれる事になった。 森の中にある別荘みたいで、その時代にしてはかなり大きくて近代的な建物だったのを覚えている。 でも中は荒れ放題で、有名なだけに壁にはあちこち◯◯参上、なんて落書きも見られた。 懐中電灯の頼りない明かりで進んで行きながら、彼氏さんがこの家の話を聞かせてくれた。 ここはお金持ちの別荘だったが、それを狙って強盗が押し入った。森の中だから助けを呼んでも辺りに人はいない。 家族は皆殺されてしまった。父母は刺殺、娘は絞殺、息子は撲殺、と酷い有り様だったらしい。 私達は暗がりの中を震えながら一通り回って外へ飛び出した。 特にこれと言って何が起きたわけではないが、入っては行けない場所、何か起きるかもしれないというスリルがたまらなかった。 もう、こんな時間だと、時計を見ると午前一時。 明日は授業もバイトもないし、ゆっくり眠ろうと家まで送ってもらい、友人が泊まりたいというので、中に入れた。
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