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別離
雨が嫌いだ。 癖毛の私の髪は、幾分か湿気を含んで広がり、結うしかなくなる。
雨が好き。いつもは履けない長靴や、お気に入りの傘をさせるから。
雨が嫌いだ。自転車が使えず、娘を保育園へ送るのに、いつもより早く家を出なくてはいけなくなる。
雨が好き。いつもは自転車を漕ぐお母さんの背中しか見えないけれど、雨の日は横にいて、顔を見ながら歩けるから。
雨が嫌いだ。保育園から駅までが遠いから、ともすればパンプスが中まで濡れる。
雨が好き。外で遊べないけれど、大好きなお絵かきがたくさんできるから。
雨が嫌いだ。満員電車の中までも湿気に満ちていて、濡れた傘やカバンが当たったりする。
雨が好き。窓の雨の粒を数えながら、お母さんの迎えを待てるから。
雨が嫌いだ。保育園の迎えの時間を気にしながら仕事をしなくてはいけなくなる。
雨が好き。いつもよりちょっぴり早く、お母さんが迎えにきてくれるから。
雨が嫌いだ。雨の日に死んだから。
もしあの日、いつも通り早目に会社を出れていたら、電車が遅れていなかったら。
雨が好き。だけどあの日嫌いになった。
もしあの日、わたしがはしゃぎすぎなかったら。言い付け通り、横断歩道の手前で止まっていたら。
信号が青だったならーー
路面が濡れていなかったならーー
手をしっかり握っていたならーー
きっとーー
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