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…チクタク、チクタク 定時はとっくに過ぎているのに、仕事は終わらない。オフィスにチエ1人。残業はつかない。所謂サービス残業。ブルーライトが少々辛い画面を見ている。キーボードを打ち込む。打ち込む。 チエは、営業成績がよく、同僚から妬みをかってしまった為に仕事を押し付けられてしまった。終わらない仕事は山ほどある。 仕事ばかりしているチエにとって、これ日常の中の日常だった。 仕事が嫌いな訳ではない。たが、好きだからしている訳でもない。その様な仕事を押し付けられたらどうしたら良いものか。 23時半、半分諦めてケリをつけ、家に帰ろうとする。 街行く人々は皆傘を差すが、チエに傘はない。置いておいた傘が何処かへ行ったのだ。無事であるはずもなく途方に暮れていたが諦めて駅を目指す。 色とりどりの傘が織りなす待ちを傘を差さずに歩く。全身びしょ濡れ。気持ち悪い。ネオンと雨が奇妙にゆらゆら揺れている。 駅に着くと一安心。濡れた身体を気にせず改札を通すとアナウンスが聞こえ、手を止める。足を止める。 「只今、三橋線は23時頃発生した人身事故の影響で全線運転見合わせております。…」 帰れなくなった。残業の所為で。 明日も仕事である為、駅近くのビジネスホテルに泊まろうとする。 1件目、2軒目… 急に起こった人身事故の為、チエと同じ様に帰れなくなってしまった人が沢山いるのであろう。ホテルは埋まっていた。 フロントでは怒鳴り散らしている人もいた。皆、ホテルが取れなくて焦っているのだろう。
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