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入院してから、病院には、春一あての贈り物がわんさと届くようになった。
最初は恐縮しながらも受け取っていた春一だが、中には眉をひそめるようなモノも混じっている。
脅迫状つきの花束や、明らかに様子がおかしい菓子などだ。
それをわざわざ送料を払って送ってくるのだから、世の中は妙な人間が多い。
「緑色の物体が詰まったシュークリームを見て、食い物はヤバいって久しぶりに思い出したよ」
それに気づいてから春一は、贈り物は受け付けた後、病院側で全部処分してくれと頼んだ。
受け取り拒否も考えたが、バレたら逆上される可能性もある。
だから今日秋哉に渡した菓子は差し入れなんかではなくて、信用できる看護師に頼んで、春一が買ってきてもらったものだ。
何でもいいと言ったら、選択がシュークリームだったことは、まあ皮肉な偶然だ。
春一の告白を聞いて、夏樹はふぅーと大きなため息をつく。
「中高時代の春は、それでイヤってほど苦労したもんな」
あの頃の春一は、バレンタインにもらったチョコなど、ひとつも口に出来かった。
一度ひどく腹を壊して病院に担ぎ込まれたことさえある。
「仕方ねぇ。目立っても良いことはないって証明だな」
来生家で一番目立つ男は、すぐに納得した様子だが、
「でも訳も話さずに鈴音を外に出すなって要求は、さすがに無謀だぜ春」
「でも鈴音には関係ないことだろう」
夏樹は言うが、最悪の事態だけは避けたいと願う春一だ。
「鈴音を怖がらせたくないんだよ」
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