110人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
「でもさ春」
夏樹の呼びかけでハッと我に返った。
「さすがに限界だぜ」
当たり前だ。
記事が出て以降、外出禁止は鈴音だけでなく秋哉や冬依も学校を休ませている。
いくら学校のセキュリティがしっかりしていようとも、コレと目をつけた記者たちの追っかけは、獲物を見据えたハイエナだろう。
ふたりが未成年だとか、もう関係ない。
春一自身が記者だから、身に染みてわかっている。
春一が姿を隠してしまったことが、なおます秋哉や冬依の注目を集めてしまった。
「……すまない」
みんなには不自由させている。
ストレスが溜まるのも理解できる。
しかし、
「謝る必要はないさ。春が悪いわけじゃないことはみんなわかってる」
「……」
謝るなと言われてしまえば、春一が言えることなど無くなってしまう。
「ああもう、だからって黙るなよ」
夏樹はなかなか厳しいことを望む。
「鈴音に声をきかせてやれ」
「!」
春一は驚いた。
「鈴音がそこにいるのか?」
「ああ、いい加減限界だって言っただろう。この電話スピーカーになってる」
最初のコメントを投稿しよう!