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夏樹は、
「春も知っているだろう。俺が通ってる会員制のジムだ。あそこなら記者連中も入ってこられない」
春一はその場所を思い出しながら、
「それこそ会員じゃない鈴音は入れないんじゃないのか」
問うと、
「その辺は任せとけよ。何のため俺が自由でいると思ってるんだ」
夏樹は、あの事件の中、実はひとりだけ報道陣に顔バレしていなかった。
春一が病院にいる間も、カメラの目を盗んでこっそり見舞いに来ることに成功していた。
まったく、どうやったのか……。
夏樹は普段なら、人一倍目立つはずなのに、
「俺の容姿は金になるの。タダで放送されてたまるかよ」
なんて笑いながら言っていた夏樹は、あの頃からすでにこの騒動を予想していたとしか思えない。
だがお陰で、助かっている。
スポーツジムも全員入れるように夏樹が手続きしてくれたのだろう。
「春も来いよ」
「え?」
「なんのための会員制だよ。春も来い。そこで落ち合おう」
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