桃パフェにマンゴープリン

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それから、 「鈴音!」 鈴音もちゃんといた。 夏樹の背中に庇われて、無事に連れて来られている。 春一は思わず胸をなで下ろす。 すると、 「春さん!」 鈴音は春一の姿を見つけて、弾けるように駆けだしてきた。 すぽんと胸に飛び込んでくる。 「春さん。会いたかったです」 春一の胸にしがみついて、可愛くそんなことを言う。 「鈴音……」 いきなりのゼロ距離に、春一の胸が締め付けられる。 「鈴音」 頬に触れる鈴音の髪もやわらかな体も、何もかもが愛おしくて、春一は鈴音をかき抱きそうになった。 抱きしめて、鈴音の鈴音の香りを胸いっぱいに嗅いで、鈴音を全身で受け止めたい。 だけど、 「姐さん、これ姐さんのロッカーの鍵――」 鈴音の受付を済ませたひとりが声をかけてくる。 パッと体を離す鈴音。 「……ごめんなさい!」 春一は腕を広げたまま、虚しく固まってしまう。 さっきまで鈴音がいた場所に冷たい空気が流れ込んでくる。 「バッカお前、空気読めよ」 「ハルさんに殺されたいのか」 声をかけたホストを、他の皆が蹴り飛ばしている。 「……」 春一はそんな見境無い男ではないから、皆の認識には一度抗議する必要がある。
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