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「ばか、そんなわけ――」
言い訳しようとして気がついた。
「なんだお前ら、その格好……」
秋哉と冬依は、派手なスーツを身につけて髪型までいつもとは変えている。
冬依が銀髪で、秋哉ときたらドレッドヘアだ。
当然カツラだろうが、
「……」
春一は呆気にとられる。
本人たちは、夏樹のようなホストスタイルのつもりだろうが、体中にじゃらじゃら付けたアクセサリーは、ホストというよりレゲエ感満載。
「どう? ボク大人っぽいでしょ」
「笑うなよハル。笑うんじゃねぇぞ」
見せつけるように自慢げにターンする冬依に、唇を尖らせる秋哉。
「……」
あまり奇抜なスタイルに声も出ない。
「――ねっ」
冬依は諦めたように肩をすくめる。
「ボクらがこんな格好なのに、春兄は今の今まで気づかない。鈴ちゃんしか見えてなかった証拠だよ」
「いっとくがオレはジンガイなんだからなハル」
「秋兄、それ言うなら心外。確かに人間とは思えない、正気の沙汰じゃない格好だけどね」
冬依にピシャリと言われて、ガクリとうなだれる秋哉。
「……そんなに似合ってねーかなオレ」
もしかして気に入っていたのか?
ああ、でも……、いつもの光景だ。
なんら変わらない来生家のやり取り。
「元気そうで良かった、ふたりとも」
春一は秋哉と冬依の頭をキュッと抱く。
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