足元から響いてくるサンドバッグを叩く音

6/8
110人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
だし抜けの言葉に、誰もが声を失う。 何か思うよりも、まず頭が真っ白になる。 「……は、何言ってんの春?」 芸もなく、さっきと同じセリフを繰り返す夏樹。 そうだよ、と続けるはずの冬依もポカンと口を開けたままだ。 「……春、さん?」 やっとのことで、鈴音が春一を呼んだ。 「……」 だけど、春一は答えない。 ふいと鈴音から視線を外して、またサンドバッグと向かい合う。 「もう話すことはないよ」 はっきりとした、揺るぎのない春一の声。 「さよなら」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!