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だし抜けの言葉に、誰もが声を失う。
何か思うよりも、まず頭が真っ白になる。
「……は、何言ってんの春?」
芸もなく、さっきと同じセリフを繰り返す夏樹。
そうだよ、と続けるはずの冬依もポカンと口を開けたままだ。
「……春、さん?」
やっとのことで、鈴音が春一を呼んだ。
「……」
だけど、春一は答えない。
ふいと鈴音から視線を外して、またサンドバッグと向かい合う。
「もう話すことはないよ」
はっきりとした、揺るぎのない春一の声。
「さよなら」
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