足元から響いてくるサンドバッグを叩く音

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――! 夏樹は春一をぶん殴る。 予期していなかったせいか、春一はリングの側まで吹っ飛び、そこに尻をついた。 「何言ってんだバカ春。取り消せ、取り消せよ!」 夏樹は怒鳴るが春一は答えない。 前髪が顔をおおって表情は覗えないが、口元が緩くあがって笑っているようにさえ見える。 「今すぐ取り消せ春!」 「夏兄、鈴ちゃんが」 冬依の声にパッと振り返れば、鈴音は口元を手のひらで覆って、ガクガクと震えている。 眉間に力を入れて目だけを見開き、春一に言われたことを脳内で何度も繰り返しているらしい。 そんなバカなことがあってたまるか! 「信じんな鈴音」 夏樹は鈴音の肩を強く掴む。 「信じるんじゃねぇ、春はどっかおかしいんだ」
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