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一、二回ステップを踏んで殴りかかってきたのを、頭を下げてかわし、突っ込んできたところに肘を食らわせてやった。
倒れていくのを追って前に進み、トドメに顔面に頭突きを足す。
鼻血を吹いてひっくり返るのを見届ける間もなく、背中から襟首を捕まえられて引き戻される。
仰け反ったところを一発食らった。
足元が浮いていたお陰でダメージはなかったが、それでも尻をついた春一を追うように蹴りが来て、腕で庇った頭部と腹を蹴りあげられる。
たまらず後ろに転がって逃げながら、追い縋ってくる相手の足にむしゃぶりついた。
「てめぇ、このっ離せよ!」
つま先で細かく蹴りあげられるのを、歯を食いしばって耐える。
離せばもっと大きなダメージを食らうだろう。
春一は頭から突っ込んで全体重で相手の足ごと引き倒す。
すかさず馬乗りになると、マウントポジションを取った。
「――おい待て」
拳を振り上げた春一に、男は瞳に恐怖の色を走らせる。
男が聞いていた話では、春一は素人のはずだ。
それが何故、こんな無表情のまま拳を握れるのだ。
「やめろ!」
懇願したが遅い。
春一は、
「――」
無言のまま、固く握った拳を男の顔面に向かって突き下ろす。
鼻の骨が砕け、春一の拳はみるみる血で染まっていく。
「ゴパァッ、ガアッ」
男は水気のこもった悲鳴をあげて悶絶した。
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