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「来生さん、来生春一さん。事件の経緯を説明してもらえませんか?」
「あなたもジャーナリストなら協力してくださいよ。ニュースソースはやっぱり例のCOOなんですか?」
記者たちに囲まれる春一の前に、くだんの黒のベンツが音もなく到着する。
春一はごく当たり前の顔で、横付けされたベンツに乗り込んだ。
「ちょっと待ってください来生さん、教えてくださいよ」
追いすがる記者もいるが、車にぶつかっていくような無茶はしない。
傷つけでもしたら、目をひん剥くような額を請求されるだろう。
「来生さん!」
虚しく声だけをかける記者に何も答えることなく、春一は姿を消した。
「ちくしょー、どうなってんだよ」
最後まで粘っていた記者は釈然とせずに悪態をつく。
すると他の仲間が、
「よせよ。もうあいつはこっち側の人間じゃない」
諦めたように両手を開く。
「あれ見たかよ。いったい何様になったつもりだ」
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