うらぶれた気配ただよう午前中の飲み屋街

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春一が書いた記事の影響は、渡口院長が逮捕され、病院の名声を地に落としただけではない。 院長自らモルヒネを横流ししていた、指定暴力団、佐々部組にも警察が介入するきっかけになった。 佐々部組の構成員が次々と逮捕され、 『渡口総合病院と取引をしていた佐々部組邸宅の様子』 と各社記事にしたが、一番最初に組の名を出して報道したのは春一だ。 いくらペンは権力よりも強しとは言っても、指定暴力団を相手に個人がケンカを売った。 しかも春一はこれが始めてというわけではなく、以前も佐々部組の構成員ともめたとされている。 一般人が暴力団と真っ向から対立。 度胸があるのか、それともバカなのか。 春一は、暴力団からの報復を恐れる様子もみせず、黒塗りのベンツに乗って記者たちを置き去りにしていった。 その格好も、 「あれチェザレ・アットリーニのスーツだよな」 「ああ。いくら今回のことで金一封をもらったって、俺たちの給料じゃあれは買えない。一体誰に買ってもらったんだか」
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