足元から響いてくるサンドバッグを叩く音

1/8
108人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ

足元から響いてくるサンドバッグを叩く音

元はボクシングジムでも、ボクシングエクササイズの流行のせいで、施設は綺麗だ。 数は少ないが、女性がサンドバッグを叩きに来ることもある。 だから鈴音を連れて降りることに抵抗はない。 なのに、夏樹はかなりの時間ためらっていた。 地下へ降りていく春一の背中が、なんとなく気に食わなかったせいもある。 鈴音と一緒に降りていいものだろうか。 しかし今日は鈴音と春一を会わせるのが目的だったはず、夏樹がひとりで春一と話すわけにもいかない。 結局、鈴音だけでなく、秋哉や冬依まで伴って、ボクササイズルームに降りていった。 ボクササイズの経験がない秋哉や冬依は、階段を降りているときから物珍しそうにキョロキョロしている。 足元から響いてくるサンドバッグを叩く音に、たまに肩をすくませたりもする。 夏樹は前にも降りているから下の様子を知っている。 階段を降りたところが広いフロアになっていて、壁際にはごついダンベル。 上のフィットネスルームにあるような2キロ3キロのカラーダンベルではなくて、片方20キロまでプレートを増やせる本格的なものだ。 その奥はサンドバッグエリア。 強面の門番が立つように左右に4つずつ天井からぶら下がっている。 サンドバッグの威圧を抜けたところに、四角いリング。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!