時は少し遡り、スポーツジムから戻った一向

15/15
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
鈴音は、何と言っていいのかわからなくなった。 自分のことのように夏樹を語る冬依。 でも、今の鈴音では戸惑いしか浮かばない。 しかし、冬依の言葉があながち嘘やデタラメでないことも、鈴音は知っている。 夏樹は、鈴音をからかいながらも、いつも側にいてくれた。 「春じゃなく、俺にしとけよ鈴音」 そんな風に冗談に紛らせながら、でも夏樹の瞳はいつだって真剣だった。 鈴音はそれを知っていたのに、ずっと放置してきたのだ。 夏樹の気持ちに気づいていながら、見て見ぬ振りをしてきた。 夏樹の優しさに甘えてきた。 「鈴ちゃんが夏兄を選んで、ずっとこの家にいてくれるならボクも嬉しいんだけど……」 冬依の言葉にハッと顔をあげる。 『――夏樹を選ぶ?』 鈴音のそんな顔を見て、冬依はちょっと困ったように首を傾げる。 「鈴ちゃんも、そんな簡単には決められることじゃないよね。だからボクは鈴ちゃんに聞くんだ。この家を出て行く? どうする? って」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!