第10章 修学旅行と俺の○○

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・千歳 side・ 「「・・・ねぇ、“王子様”。ちょっといい?」」 放課後。 いつものようにユキを迎えに行こうとしたら、なぜか双子が僕の元にやって来た。 ・・・え? 何で双子が僕目当てで来たの? 双子は親衛隊を嫌ってはないけど好きでもないってタイプだから、親衛隊隊長である僕に関わりたくないと思ってたんだけど。 てか王子様って何。 「何だって顔してるね。」 「うんうん。してるしてる。」 「俺達はただ聞きに来ただけだよ。」 「そうそう。雪兎のことを。」 雪兎、という単語を聞いただけで体に力が入る。 ユキに何かあったのか? 「あー。そんな心配そうな顔しないで。雪兎には何も起きてないから。・・・ただ、雪兎のことでちょっと気になることがあったんだ。」 「・・・僕が話せることは限られていると思いますが、それで良ければ。」 「「大丈夫だよ。」」 「で?何が聞きたいんです?」 「修学旅行で大阪に行くって言った時、微かだけど雪兎の肩が跳ねたんだよね。・・・雪兎にとって、大阪って何なの?」 ユキにとっての、大阪? そんなの・・・。 「元々いた場所、じゃないですかね。」 「え?雪兎ってずっとここにいたんじゃないの?」 「いえ。ユキは小学生になる前までずっと大阪で暮らしてました。」 「・・・じゃあ、何で雪兎はあんなに強ばった顔をしてたんだ?」 双子の片割れの言葉に、僕の心臓は嫌な音を立てる。 ユキが未だ囚われている、ユキの過去がある場所。 ユキが行きたくないと思うのは当然じゃないか。 「・・・ごめんなさい、2人共!!僕、行かなきゃ!!」 僕はカバンを手に取ると、廊下に出る。 ・・・あぁ。 今すぐユキを抱きしめたい。
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