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鬼は人の弱さにつけ込み人を惑わす。
他人と競い合うことは己の成長を促すが……勝てない勝負に負けてばかりいると自信は消失するばかりだ。これこそが鬼に隙を突かれる一番の原因だ。
だから順序を間違ってはいけない。
まず、己を鍛えることが一番だ。自分に勝たなければ他人には勝てない。そして、負けても、柳の木のようにしなやかに元に戻れる精神力を養うことこそが、自分を高みへと導いてくれる。
メイは記憶を取り戻すと共にそれを思い出したのだ。
「ふーん。だが、俺は決してデタラメで言ったわけじゃないぞ。本当にお前が一番だと思っている」
恥ずかしげもなく言い切る太陽に、メイは恥ずかしさでチリになりそうだった。
「それに……」とさらに付け加えるように太陽が言葉を発しようとした時、「ねぇ、君って艮荘の大家さん?」と声がかかった。
「ん……?」
メイと太陽が同時に振り向くと、そこに金色の髪をした外国人風の男子が立っていた。この学校の制服を着ているが見かけない生徒だった。
「僕、今学期からここの生徒、よろしく」
えっ! メイと太陽が顔を見合わせる。
「今日から艮荘に世話になるんだ。大家さんがこんな可愛いなんて、すっごくラッキー!」
メイに抱き付こうとする男子から一瞬早く太陽がメイを守る。そして、小声で言う。
「下宿人のご登場だ!」
「全く! 溜息が出ちゃう。本日も良き鬼祓日和なり……っていうことね」
~The End~
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