06.そして、誰もいなくなった

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クシャッとメイの頭を撫でると、「そういうところを含めて惚れている」と耳打ちする。 「もう、どうして今、こんなところでそんなこと言うんですか?」 真っ赤な顔で太陽を睨みながら、「でも……」とメイの唇が弧を描く。 「何だ? その不気味な笑みは?」 「良い兆候なんですよ」 メイの視線の先には下宿人たちの楽しそうな姿があった。 「なるほど」 太陽が頷く。 「盆踊りに誘うと言ったときは、何を馬鹿なことを言ってるんだと思ったが……まんざらじゃなさそうだな」 「私は自分に力がないことをはっきり知ってるの。だから、皆に助けてもらおうと思って。一人一人の力は小さくてもっていうアレ作戦よ!」 どうだ、とばかりにメイは鼻を高くしながらふふんとほくそ笑む。 「アレ作戦って……随分アバウトな作戦だな」 太陽が嫌味っぽい笑みを浮かべながら、「だが、良い作戦だ」と素直に肯定する。 「負のエネルギーを正のエネルギーに浄化させるのに、こういう活気ある場所は打って付けだからな」 「でしょう! マイナスのエネルギーなんてどこにも見当たらないもの、ここ」 ニコニコと笑いながらメイが辺りをキョロキョロ見回していると、「危ない!」と太陽が手を引く。
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