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すっぽりと太陽の胸に抱かれたメイに向かって太陽が怒りながら言う。
「人の心配もいいが、自分の身も大切にしろ」
「急にどうしたの?」
「やっぱりお前には俺が必要だな」
キョトンとするメイをキュッと抱き締め、太陽は名残惜しそうにその身体を離し、またメイの手を引き歩き始める。
「さっき、長い棒を持った奴にお前は突進しそうになったんだ。あのまま進んだらお前の低い鼻がさらに低くなってただろうな」
「鼻?」
手で鼻を覆い、「そんなに低いかな?」と首を傾げながら、「全然、気付いてなかった。ありがとう」と礼を言う。
「記憶が戻ったと同時に、随分と素直になったな」
太陽が愛おしいものを見るような優しい眼差しをメイに向ける。
「憑き物が落ちたって言うのかな? ずっとモヤモヤとしていたの。そんな靄の中にいる自分がどうにも歯痒くて……」
「だから、へそ曲がりだったと言うんだな」
「そう」と頷きながら、メイは「今思えば八つ当たりだったね」と小さく笑う。
「それが分かったんなら、俺は何も言うまい。良かったな。利口になって」
太陽は身を屈めるとメイの頭に自分の頭をコツンと当てる。そのときだ。怒鳴り声が二人を呼んだ。
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