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「仕方がないさ、長く記憶が途絶えていたんだからな」
太陽が優しい眼差しでメイに笑いかける。
「それでも、お前はやっぱり鬼祓だった。無意識でも自分の仕事を全うした。きっと、これまでもこういったことが何度もあったと思うぞ、お前が知らないだけで」
「えっ!」とメイが驚きの表情で太陽を見る。
「お前の力はそれほど強いということだ。だが、逆を言えば、だから小梅さんはお前の力を封じ込めたのかもしれない」
「どういうこと?」
「両親を殺められたお前が復讐のために鬼となる確率が高かったからでは? お前の力が鬼となり使われたら……考えるだけでも恐ろしい」
唖然とするメイに太陽がさらに言う。
「物事は何事も表裏一体だ。良きことも悪しきことも一歩違えたらどちらに転ぶか分からない」
放心するメイの手を太陽が力強く握る。
「だからだ。信頼する者同士が転ぶ先を間違えないように、助言し合ったり、手を差し伸べ合ったり、守ったり合ったりするんだ。お前が小梅さんに守られていたり、無意識でも誰かを守っていたりしたようにな」
「――こんな私でも役に立っていたの?」
自慢するようなところなど何もないと思っていたメイだった。だから尚更太陽の言葉が嬉しかった。
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