06.そして、誰もいなくなった

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プイッとそっぽを向く太陽に「照れてるの?」とメイが無邪気に訊くと、「覚えてろよ」と太陽は捨て台詞を言い、どんどん足を進める。 「ちょっと、速い! もうちょっとゆっくり」 「煩い! 皆が待ってる」 言い合う二人の声は周りの楽しげな声に溶けていく。その楽しげな声が皆の耳に届き、さらに笑顔が溢れていく。 「感じるわ。学校中が幸せのオーラに包まれているのが」 「ああ、俺も感じる」 メイと太陽の視線が絡む。 「これで艮荘には俺たち以外居なくなるだろう」 「灯里さんのマンションに時枝親子が引っ越すってことよね?」 「ああ、さっき聞いた流れだとそうなるな」 「で、安井さんも引っ越すの? 聞いてないよ」 「お前知らないのか? あいつ、メチャでかい豪邸持ってるんだぞ」 「あっ」と思い出したようにメイが口早に言う。 「あの人、売れっ子作家だった!」 「そういうこと。黒先が調べていろいろ教えてくれた」 「えーっ、聞いてない」 黒先さんたら、とメイがぶちぶち文句を言う横で、「お前、盆踊りのことでも動いてただろ?」と太陽が笑う。 そうだった、とメイはここ二・三日の自分を思い出す。
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