第3章 呪詛

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 事が起きる度に彼に結び付けられてしまうのは、裏を返せばそれだけ影響力が凄かったからであろう。  故に梟雄と言われようと身に覚えのない噂が流れようと、努めて気にせず否定しようとも思わなかった。  だが大仏殿焼き討ちの濡れ衣だけは、未だに納得出来ない。  東大寺の大仏殿が焼け落ちる直接の要因は、三好三人衆と筒井順慶が東大寺に布陣したからなのだ。  歴史ある大寺院を戦場に選ぶ方が間違っている。  大仏殿に関して言えば、実際は戦いに因るものではなく、失火に因るものと松永は考えていた。  焼失のきっかけを作ったのは三好三人衆と筒井順慶なのだから、自分だけが悪く言われるのは心外だった。  だからと言って、声を大にして反論しないところが彼の良いところだったのかもしれない。 「私には面白い御方というよりも、恐ろしい御方に思えまする」    乱法師は愛らしく首を傾げて言った。 「ふっ確かに怖いもの知らずな所業じゃのう。それ故、弾正に聞いてみたのじゃ」  乱法師の唇を指でなぞりながら楽しそうに笑い掛ける。  
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