第2話

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 それで、宗一郎に調伏してもらったのだ。力技で無理矢理にねじ伏せてもらった。生霊を飛ばしていたその女は、それから数日間熱を出して寝込んだ。その後急に精神的に不安定になったとかで、実家へと帰って行ってしまったのだ。  それ以外にも翼はあれこれと拾ってしまう。さくらも多少は拾うが、圧倒的に翼の方が妙なものをつけている比率が高い。恐らく翼の優しげな雰囲気に、妖しの者達が近寄ってくるのだろうと宗一郎は思っている。さくらはつんとした雰囲気をまとっている。街で道を訊かれる事が多い、写真を撮って下さいと声をかけられる事が多い人間は、妖しの者にも好かれやすいのだ。  二人共、椿の力を隠れ蓑にして光を隠している。けれど翼はそれでも憑かれやすい。恐らく拝み屋をしていなくても憑かれやすい体質だろう。椿が死んで、宗一郎が帰ってくるまでの数年間、翼はかなりな苦労をした筈だ。だから翼が調伏の力を欲しがるのも分かる。宗一郎には、分かりはするのだが……。 「……おじさんには、言ってるのか? おじさんの許可がなければ、俺が勝手に翼にそんな事を教える訳には……」 「親父になんか何にも言ってないよ。どうして親父の許可がいるの? 俺は大人だよ。自分の意思で強くなりたいんだ」    翼は真剣な目で言う。宗一郎はため息をつく。 「じゃあ……駄目だ。おじさんの許可がなけりゃ教えられない。翼はおじさんの跡取りだ。妙な橋を渡らせる訳にはいかない」 「宗ちゃん、俺は大人なんだって。もう子供じゃない。それが妙な橋かどうかも自分で判断する。その上でお願いしてるんだ。俺が強くなれば、宗ちゃんだって助かる筈だよ?」 「そりゃあそうだが……」  宗一郎は自分の非力が分かっている。記憶にある椿に比べて、宗一郎は霊的な体力が低い。それは恐らく経験の差。翼が片翼を担ってくれれば、確かに宗一郎はずっと楽に仕事を進められる。  けれど調伏というのは、正しさだけで行使する力ではない。失敗すれば命を失う。翼にそんな危ない橋を渡らせる訳にはいかないのだ。
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