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「やっぱり、駄目だ。おじさんは観光協会の会長で、商工会議所でもロータリークラブでも役職についてる。そのうち政治の世界に担ぎ出されて立候補をするだろう。それはお前が旅館を継いで、うまく切り回し始めた後だ。だからお前は五体満足で藤屋旅館を継ぐんだ。拝み屋の仕事なんかで、危険な目に合う必要はないんだよ」
「そんなのは親父の勝手だ。俺には俺の人生がある。旅館は継ぐよ。そのつもりで育ってきた。俺にはやれる。でも、宗ちゃんの力も欲しいんだ。自分に降りかかる厄介事を自分で処理したい。そうでもなきゃ」
翼は言葉を切る。少し迷うような顔をして、でも言う。翼は、本気なのだ。
「俺、結婚出来ない。家族を護れない。好きな女を巻き込んで、危険な目に合わせたくないんだ。だから教えて。俺、必ず強くなるから……」
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