第3話 ジュラ紀の森

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 脚のすらりと長いオレンジ色の鰐類が、土煙をあげながら猫のように駈けてゆく。  奇抜な恰好をした恐竜が歩いてきた。体の大きさはカンプトサウルスと大差ない。けれど、背中に菱形の板が互い違いに生えている。横から見ると、自分より一回りも二回りもおおきく見えた。 「ステゴサウルスだ……!」  俺は感嘆して、マキナさんのもとを離れた。  ステゴサウルスは黄緑色をしていた。腹は色が薄い。背中は鮮かなエメラルドグリーンのまだら模様になっている。ただし、これはカンプトサウルスの眼を通して見た色だ。人間の眼にはもっと地味に映るかもしれない。  背中の板はほんのりと赤みを帯びていた。背中の中心から離れるにつれて板は小さくなる。尻尾の尖端では二対の棘に変っていた。棘は太く鋭く水平に生えている。時々尻尾を左右に揺らすので、反対側に回り込むときに、俺は危うく串刺になるところだった。  今は湖の水を飲んでいる。首にペンダントはなかった。けれど、代りに面白い特徴を見つけた。硬そうな粒々がびっしりと喉を覆って、頸甲(あかべよろい)を作っていたんだ。まるで発泡スチロールの断面か、和菓子の五家宝(ごかぼう)みたいに見えた。  湖を中心に、マキナと手分して探す。ディプロドクスの長い首を見上げていると、ペンダントから声がした。 「トゥキ様、羽揺さん、来てください。私は湖の南東の森の中にいます」
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