第3話 ジュラ紀の森

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*  車内前方でドライブレコーダーの立体映像が流れている。太い枝の上を、白い動物が左から右へ飛び跳ねていった。ほっそりした体つきで、尾の長い鳥のような姿をしている。首元で緑色の光がきらめいていた。 「僕はコパリオンに変身してたんだね。トロオドン科の恐竜の、古い種類だよ」  車内に座席は一つだけある。その後ろに、人が一人うずくまれるくらいの広さの空間があった。マキナさんのトランクだ。ツキはそこで膝立になって、俺と一緒にさっきの映像を見ていた。  俺は席に着いたまま顔を上げた。フロントガラスの向こうに、ドライブレコーダーと同じ森の景色が広がっている。俺は立体映像を指差した。 「ツキの故郷もこれで探せばいいのに」 「そんなに昔の記録は、さすがの私にももう残っていませんよ」  マキナさんが笑った。 「羽揺はこれをかけてくれる? 目盛は録画時刻に合せてあるから」  ツキから星の目グラスを受け取る。俺はそれをかけた。太い枝の上を、白い動物が左から右へ飛び跳ねていった。 「昨日、学校の塀が壊れた時刻を、星の目グラスで探り当てたよね。それと同じことをしてくれるかな」 「……同じこと、っていうと?」  眼鏡を外し、俺は訊ねた。 「過去の僕が――つまり、今見たコパリオンがどこからやってきたのか、調べるんだよ。今、コパリオンはどっちから走ってきた?」  ツキが言った。俺は答えた。 「左からやってきたよ」 「じゃあ、マキナに『左』と言って」 「ひ、『左』!」  マキナさんは少し左に移動した。ツキが続ける。 「次に、眼鏡の目盛を何秒か過去にずらして」  言われた通りにして、また眼鏡をかける。コパリオンが森の奥から駆けてきて、枝に飛び乗るところが見えた。 「今度はどっちから走ってきた?」 「奥……だから、『前方』!」  マキナさんが少し前に進んだ。 「それを繰り返していけば、過去の僕が降り立った場所に辿り着けるはずだよ」 「なるほど」
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