第3話 ジュラ紀の森

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 小さな簞笥のようなものがツキの周りに並んでいる。ツキはその場にかがみ、下のほうの引出を開けた。半透明の引出の中に、おなじみの道具や保存食の包装らしきものが見える。種類別に仕舞ってあるみたいだ。 「ツキの道具ってマキナさんに積んであったんだな」  ツキが頷く。 「いつもペンダントで、マキナのトランクから取り寄せてるんだよ。ほら、ここに」  ツキが指さす。トランクの床附近の空中に、小さな四角い孔がぽっかりと開いていた。 「さっき、トゥキ様と羽揺さんに四次元ペンダントを通じて連絡しましたよね。あれも、その孔に向けて私が声を吹き込んでいたんです」  マキナさんが言った。 「つまり、マキナさんのトランクは、クローゼット兼連絡窓口みたいなものか」  何気なく会話を交わす俺とマキナさんを見て、ツキは微笑んだ。 「じゃあ羽揺、あとはよろしくね。――僕は体調が悪いから、休ませてもらうよ」  ツキが申し訳なさそうに言った。言われて見れば、確かに普段にも増して顔が白い。心なしか、髪もいつもより白く見える。 「諒解。――そっか。お大事にね」  ツキは小さく頷いて、リボンになった。
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