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俺は星の目グラスをかけてコパリオンを逆追跡した。リボンになったツキはトランクの床で眠っている。
はじめは眼鏡の目盛の調節がうまくいかなくて、マキナさんにじれったい思いをさせてしまった。でも、俺もだんだんと慣れてきた。マキナさんもいちいち停車することがなくなった。俺の言葉に合せて、走りながら方向転換してくれるようになった。
空高く昇っていた太陽が、じりじりと東のほうへ下りてゆく。やがて、森の木々のあいだから眩しい光をちらつかせるようになった。朝日だった。
そろそろ終りに近づくという時に、大きな影が視界を横切った。
「停って!」
俺は言った。マキナさんが急ブレーキをかけた。
「どうしたんですか、羽揺さん」
「今、目の前を大きな動物が通ったんだ」
ダイヤルを戻して、見直す。鱗で覆われた黄色い肌だった。さらさらした焦茶色の毛のようなものも生えている。けれど、体が大きすぎて全体像がまるっきり摑めない。
「きっと、大型の植物食恐竜でしょう。ここは獣道ですから」
マキナさんが気軽に言った。
「でも、植物食恐竜に羽毛があるだなんて」
「珍しいことではありませんよ。プシッタコサウルスの尾に、長い毛がふさふさ生えているのを見たことがあります」
「そういう類なのか……?」
もう一度ダイヤルを戻して、毛皮をじっくりと見詰める。この時は結局、大きな影の正体はわからずじまいだった。
俺はその後、過去のマキナさんからコパリオンが降りてくる瞬間を目撃した。白い光とともに彼女が現れるところも、ばっちり確認した。
俺は目盛を読み上げた。マキナさんはその時刻にタイムスリップした。
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