第3話 ジュラ紀の森

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 日が出たばかりで、森の中は薄暗かった。  過去のマキナさんを待ち構える。マキナさんは透明になって、大きな倒木の裏に身を潜めていた。  トランクの床でリボンがぴょこりと動いた。 「もう少しですよ、トゥキ様」  マキナさんがなだめるように言った。  白い光が現れた。マキナさんがドローンを飛ばす。俺は咄嗟に座席の後ろを見た。  マキナさんが言った。 「ドローンはトランクではなく、天井の中にしまってあるんです。車内からは見えませんよ」 「なあんだ」  光の中から過去のマキナさんが飛び出した。猛スピードで森の中を走り、俺たちが隠れているのとは別の倒木に突っ込んだ。俺はそのあまりの迫力に、びくりと体をこわばらせてしまった。  過去のマキナさんが後退する。ボンネットから木屑がポロポロと零れ落ちた。けれど、そこにはかすり傷ひとつ付いていなかった。 「……丈夫なんだな」 「人工蜘蛛糸繊維でできているんです。銃弾も跳ね返しますよ」  マキナさんは誇しげに言った。 「銃にも負けないの!? すごいなあ」 「ふふ、ありがとうございます」  天井燈が暖かな色に染った。  車内前方に動画が映し出された。過去のマキナさんを真上から見たものだ。今まさにドローンが撮影しているらしい。  映像の中のマキナさんがうっすらと透け始めた。車体全部が透けるんじゃない。天井だけが透明になって、車内の様子が丸見えになる。 「透視映像です」  マキナさんが教えてくれた。  座席にいるのは過去のツキだろうか。あの、白い長髪を垂らした人間の姿をしている。でも、表情はわからない。真上から撮っているから、つむじしか見えないんだ。  ぎこちない手つきで千変鏡を構えている。過去のマキナさんに使い方を教わっているようだ。車外には一匹の赤茶色のコパリオンが立っていた。  映像が拡大される。過去のマキナさんのメーターパネルが映し出された。オドメーターには「0yr 4d」と表示されている。その下にはこんな文字列があった。 (数字はいい加減だ。四年も前のことだから、俺も正確な値を憶えていないんだ。申し訳ないけど、これで我慢してほしい)
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