第4話 日本は海の底

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 扉を開ける。その向こうを見て、俺は思わず「わっ」と声を上げた。部誌のことなんてどこかへすっ飛んでしまった。  玄関に仮面をつけた男が立っていたんだ。 「ど、どちら様ですか」  びくびくしながら訊ねる。男は「そうだなあ」と考える素振をしてから、「ユウとでも呼んでよ」と軽々しく言った。  ユウさんは俺よりほんの少し背が高かった。なぜか半透明のレインコートを羽織っている。その中に着ているのは白い半袖のシャツ。防水加工のある紺色のロングパンツを穿いていた。裾の下に見え隠れするのは黄色いレインスニーカーだった。 「ユウさん。ご用件は」  彼は「あ、そうだったそうだった」とわざとらしく頭を搔いた。 「実は、この家に泊めてほしくてお邪魔したんだよ」  白い中華風の仮面には目の穴が二つあいていた。黒い瞳が俺を見下ろし、微笑む。  背筋がぞくぞくした。どうしてこの家に泊まるんだ? どうして顔を隠しているんだ? 意図がわからなくて、気味が悪かった。 「親を呼んでくるので、待っていてもらえますか」  上ずった声で、やっとそれだけ言った。俺が振り返ると同時に、ツキが廊下にやってきた。 「どうしたの。羽揺」  ツキが玄関を見た。そして、ユウさんの風貌にぎょっとする。  俺はもう一度ユウさんを見て、ツキとは違う意味で目を見張った。彼は傘立を物色していたんだ。 「ユウさん、それ、俺の傘」  ユウさんは紺色の傘を引き抜き、一人で外に出て行った。  俺たちは頷き合うと、外に飛び出した。
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