第4話 日本は海の底

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「やっぱり晴れてるじゃないか」  ユウさんが会計を済せている間。店の外に出て、俺は拍子抜けた。道路に張った大きな水たまりが、昼間の日の光を反射させていた。  ツキがふふっと笑った。 「『何が起るんだろう』って身構えてたけど、杞人の憂えだったね」  俺たちは笑い合った。  ユウさんが歩いてきた。大きな買物袋を片手に提げている。もう片方の手には俺の傘が握られていた。 「ユウさん。その傘使わなかったんですから、早く返してくださいよ」  俺が声をかけた、その時だった。  自動車が道路を走り抜けた。水溜りが巨大なしぶきになって俺たちに襲い掛かる。ツキが腕を盾にした。俺は目をつぶった。  まぶたの向こうで、水が何かに当って弾けた。  不思議に思って目を開ける。紺色の傘が開かれていた。水に濡れてキラキラ輝いている。一方、俺は濡れていなかった。ツキも無事だった。  ユウさんが傘を畳む。彼の体は濡れていた。つるつるしたロングパンツが水滴をはじいていた。 「未来から来たんだね」  いつもより低い声で、ツキが言った。  そうか、と俺は納得した。ユウさんはこうなることが分かっていて、俺の傘を持ち出したんだ。レインコートを着てきたのも同じ理由からだ。 「誰? 何をしにやって来たの?」  ツキが睨む。  その剣幕を吹き飛ばすように、ユウさんは爽かに笑った。 「俺は『ただの助っ人』だよ」  そう言って、俺に傘を返してくれた。
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