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視界が晴れると、辺りは夜になっていた。
空には三日月が出ている。その光が海面に反射して、波に揺れていた。
俺は水面の下を覗いた。はじめは、暗くて何も見えなかった。でも、だんだんと目が闇に慣れてくる。
海の中で光が群れをなしていた。発光するイカだ。もう少し深いところを黒い影が横切ることもあった。たぶん、夜行性のサメか何かだったんだと思う。
海上の岩陰に目を凝らす。翼竜が寄り添いあって眠っているのが見えた。
「あと五秒です」
マキナさんが言った。
空に光の塊が現れた。それより少し早く、マキナさんからドローンが飛び立った。
過去のマキナさんが翼竜の群れに突っ込む。翼竜が一斉に飛び立って、騒いだ。
「……どうして毎度ぶつかるんだ」
俺の呟きにマキナさんが反応した。
「きっと『時間移動をする時は停車しなければならい』ということを知らなかったのでしょう。起動してまだ日が浅うございますからね」
それって、人間と同じように失敗しながら学んでゆくということかな。自動運転車がそんな感じでいいのかな……?
車内前方に動画が映し出された。ドローンの撮影している映像を、マキナさんが受信したんだ。
「新生代の氷河期。場所は日本ですね」
過去のマキナさんが島影に隠れる。マキナさんはそれを見計らって、ヘッドライトを点けた。暗い海面が照し出された。
オドメーターには「999yr 362d」と表示されていた。
座席で伸びをする。ふと、ダッシュボードの上のノートが目についた。それを手に取り、声をかける。
「ツキ、終ったぞ」
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