第4話 日本は海の底

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 俺はマキナさんに乗った。車内前方に地球の立体映像が浮び上がる。地球はゆったりと自転していた。  大陸の形はやっぱり現代と違っていた。南北に細長い海が北米大陸をまっぷたつにしている。ヨーロッパは水びたしで、小さな島々が散らばっているだけだ。  ツキが車外から説明した。 「白堊紀(はくあき)の地球は今よりずっと暖かかったんだ。北極や南極の氷も海にとけてた。水かさが増したことで、それまで陸地だった場所も沈んじゃったんだよ」  ツキが北の大陸の東端を指さした。 「僕たちが今から行くのはここ。現在の日本列島があるあたりだね」 「知ってる!」  俺はハキハキと言った。 「映画を観たよ。ピー助がいたんだよな」  ツキは笑った。 「そうだね。でも、フタバサウルスの棲息年代より少し時代が下るから、会うことはないと思う」  ユウさんはあぐらをかいて、俺たちの会話を黙って聴いていた。  ツキがリボンに変身し、俺の頭にくっついた。メーターパネルが慌しく点滅する。 「ちょっと待って。持っていきたい物があるんだ」  俺はマキナさんを降りた。シャーペンをワイシャツの胸ポケットに挟み、ノートを小脇に抱えた。これを持って行けば、小説のネタに出会ってもその場で書き留められる。  もう一度乗り込む時に、ユウさんに声を掛けられた。 「お気を付けて」  俺は何も言わなかった。何も言葉が浮ばなかった。マキナさんが静かにドアを閉める。 「行先、白堊紀新世、日本」  車外の景色が霞んで、しまいには真白になった。
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