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呪いが真実にせよ、痣を自分の身体に持たなければ何ら関係ない。
正兵衛は杞憂を払うように努めるが、肝心の零弦は一緒に笑わおうとはしない。
「ならば正兵衛よ」
零弦は綿の着物から、右肩だけをぐいっと出す。筋肉質の肩が姿を現した。
「これを……しかと見よ」
零弦の右肩を見て、次の瞬間、正兵衛は色を失った。
痣が。
丸い痣だ。
中には小さな梅の花が四つ、菱形に。
書物に記された『嘉吉の鍔』とそっくりな模様の痣が、一つ浮かび上がっていた。
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